ロースハムが出来るまで
原料処理
肉の本ロース(背骨に沿って両側についている肉です)。この部分は、料理ではカツやステーキ、ピカタ等、厚めに切って利用する料理が多いようですが、それは肉の繊維を切断するような噛み方にならない為、やわらかく召し上がれるからです。
入荷したばかりの肉は、生体から骨をはずしただけの状態ですから、肉の表面に残っている軟骨を取り除き、リブロースの部分を切り取ってアバラ骨の筋膜を切去ります。裏返して適度な厚さに脂身を切取り、肉の表面に残った余分なものを包丁を使って取り除きます。整形のすんだロースを3等分します。1頭の豚から2本のロースが取れ、1本のロースから3本のロースハム用の肉塊が取れます。
塩漬
整形した肉の重量から計算した、天然塩・硝石・砂糖・香辛料をよく混ぜ合わしたものを、肉温を上げないように素早く、丁寧に肉にすり込み、空気に触れないようにラップで包んでバットに詰め、冷蔵庫内で10日ほど低温で保管します。
洗浄
塩漬の終わった肉は、C・M・C(キュアードミーカラー)といって赤く発色しています。
これは、肉の中の血液色素のなかの鉄分が硝石の成分と結合して安定化した結果、その後の加熱で酸化しにくい状態、C・C・M・C(クックドキュアードミートカラー)になるのです。
更に肉の香りをハムの香りに変える働きをする為、あの独特のハムの香りが出来上がるわけです。
塩漬中に酸化した脂分と表面の香辛料を洗い流すため、人肌のお湯(豚の脂肪の融点は人の体温より若干低めなのです。)で丁寧にすばやく洗います。
塩漬中に余分な水分も脱水されます。
充填
ロースの太さにあわせてファイバーケーシング(人工の腸のこと。この太さの天然腸は異臭が気になるので使っていません。)を用意して、ロースを丸めた状態で押し込みます。
結束
絞込みの時に金の留め金が外れないようにタコ糸で補強をします。
つぎに詰めた口のほうをしっかりと縛りこみます。
縛り込み
両端を縛ったロースハムを今度は転がすように力いっぱい、太いタコ糸で縛り上げます。
結着剤等の添加物の力を借りていないので、ここで力を抜くと出来上がった品物の肉の結合面がスライスした時に身割れを生じたりするため、満身の力を込めて縛り上げます。
縛り込みが終わったロースハムには、余分な水分が出てきて、ケーシングと肉の間に溜まるため、細い針で染み出てきた水分が抜けるよう穴をあけます。
この後、冷蔵庫で休ませ、上がった肉温を下げてやります。
冷薫
桜のおが屑で一昼夜、ゆっくりといぶすことで肉の中心から水分をしぼりだしながら、スモークの防腐成分を肉全体にゆっくり染み込ませます。
蒸らしと乾燥
翌朝、バーナーに火を入れ、徐々に60度位まで庫内温度と湿度を上げていき、スモークハウスの中で一定時間、蒸らすことにより製品の発色及び香りを良くします。
その後、次の工程の温薫で色付きが良くなるように外気を通しロースハムの表面を乾燥させます。
色付け
蒸らし終わった製品は、一度、冷たい乾燥した空気をあててやることで表面を乾燥させ、肉とケーシングの間にコラーゲンの皮膜を作ってやることで、この後の加熱でハムの旨みが外に流失しないよう製品の中に閉じ込めてしまいます。しっかり表面が乾燥した状態のものにヒッコリーのチップで温燻状態のスモーキングをし、赤味がかかった美しい色合いに仕上げます。
ボイル
ボイル槽の中で製品の中心の温度が63度以上で30分以上通過するよう、75度前後のお湯でゆっくりボイルします。これは、この条件で大腸菌が死滅するためと、肉のタンパク質が一番いい状態で固まるからです。
このため、ボイルの温度が高すぎたりすると製品が萎縮してただ堅いだけのボソボソしたハムになってしまいます。
ボイル槽に入れる前に、太さ毎にまとめて細い方のロースハムの中心から温度を測るため、ハムの中心にオーダーで作った隔測温度計を差し込みます。
ハムの中心温度が63℃になるとブザーがなり、30分タイマーを合わせ、次の太さのロースハムの中心に差し替えます。
そして30分経つごとに、冷水に移します。
補足
オーダーの隔測温度計
冷却
ボイルし終わったものは、すぐ冷水で冷やし、表面を適度に乾燥させ、一晩冷蔵庫に吊るしたのち翌朝、真空包装して製品用の冷蔵庫にて保存となります。